モノマネは似すぎてはいけない

「センスの哲学」千葉雅也著をめちゃめちゃゆっくり読んでいる。 第一章に、センスのよさとはなにかを説明するために、絵画の話とインテリアの話が出てくる。 芸術は、写真に近づくことを目指していない。ゴッホもセザンヌも独自の線が横溢していて写真には…

「デッドライン」面白い

哲学者の書いた小説「オーバーヒート」に続いて「デッドライン」を読んでいる。すごく面白い。 めちゃくちゃ頭の良い学生のありふれた生活を描いているのだけど、主人公は、性指向を中心に、周囲に小さな違和をしょっちゅう感じている。 時折現れる、修士論…

男装の麗人的書店員さん

朝ドラの主人公の同級生に、女性だけれど常に男もののスーツを着て、髪もピッタリなでつけ、まるで男装の麗人のような人物がいる。 主人公はこの人に「素敵、宝塚みたい!」と声をかけて怒鳴られる。彼女は明治時代、女性が虐げられていることに強い怒りを抱…

SNSののどかなフィールド

けらえいこさんの、あたしンちのベスト版を読みおわり、続けてほかのも読みたくなって、けらさんの古いエッセイ「セキララ結婚生活」を電子で買って読んだ。 ちょー久しぶりに読んだけれど、やっぱり面白かった。エピソードに出てくるちょっとした女性のキャ…

ローカルの人付き合いをサボりまくった結果

学生時代の同級生と久しぶりに話す機会があった。おもえば、高校時代は脊髄反射的な会話しかできなかった。こう言われたからこう言った、というただそれだけの会話だ。内容だって、なになにのテストがさー、とか誰それさんがさー、とか。その日の出来事と噂…

小冊子Link春号のお知らせ

コワーキングスペースおおたfabさんから、小冊子 Link vol.15春号が発行されました。 おおたfabを利用する市民が作った、エッセイ、漫画、ショートストーリーなどが載っています。 リンク先から読めます。よかったらどうぞ。私も書いてます〜。 Link vol.15 …

膀胱洗浄

注意 シモの話 寝たきりの父は尿道カテーテルを入れてるのですが、たまに尿路感染でおしっこがにごります。抗生剤を4日ほど飲めばきれいになりますが、3週ほど経つとまたにごります。 カテは基本的に2週に1回交換で、にごりのせいで管が詰まったときは臨時で…

つかいどころ

小さな会社立ち上げから、長く、ともに走ってくれていた従業員が退職を申し入れてきたという。退職理由は、「もっと自分の〇〇を活かしたいから」。 「何が気に入らなかったっていうの?一体私の何がいけなかったというの?あれとこれとそれを頼んだのがよく…

父のお買い物

「おかーさん、ちょっとちょっと」「なに」「これ。安くて、健康に良いそうだよ。買ったほうがいいよ」 ふとんの中から、新聞の広告欄を指し示す父。「あーそうやね。あとで頼んどくわ」 そう答えておいて、実際には注文しない母。でも父は満足する。すぐに…

しんどくはない…

私「介護で何が一番しんどい?」母「べつにしんどくない」私「私はおむつ替えしんどいよ?お母さんは、食事介助?おむつ替え?しょっちゅう呼ばれるのがしんどい?」母「どれも、しんどくはないんよ。ただ呼ばれたときに、『あ、めんどくさー』とは思う。あ…

zine“Link”のご紹介

大田駅からほど近いコワーキングスペース 、おおたfabさん発行のzine〝Link〟に参加しています。 紙媒体で買うこともできますし、Web上で読むこともできます。 過去のリンクを貼りますのでよかったらお読みください。 Link vol.14冬号 テーマ「手帳」 https:…

筆ペン

コロナ禍のちょっと前に、とあるエッセイ(確か若松英輔さん)を読み、好きな言葉を抜書きすると良い、心にも良いし、文章の練習にもなる、的なことが書いてあるのをみつけて、へーと思った。 その後、コロナ禍に入り、生活の制限が厳しくなり、コーヒー屋も…

無知と悪あがき

本を読んでいると、知らない人名とか横文字とか専門用語がポロポロ出てくる。ググってもすぐ忘れるので、スルーすることも多い。 「もう少しおとなになれば、こういう言葉を全部あやつれるようになるんだ…」と長らく思ってきたが、人生を折り返し、なんだか…

亀のような日々

どうしてそんなふうに受け取るの?どうしてそんなに意地になるの?どうしてわかってくれないの?て思うことはよくある。仕事でも。 学生の頃は「話せばわかる」という幻想を信じていた一方で、たとえば、激しく怒ってる人を納得させねばならぬとか、そんな場…

本屋の探索ルート

人と話していて、本屋に行ったとき、いつもどのあたりを見にいく?という話になった。ちょっと書いてみる。 まず単行本の新刊コーナーに行く。前は、新刊コーナーって見てなかったのだが、「Twitterで見かけて気になった新刊本が、ちゃんと地元書店にも入荷…

ある夜

--誰か!誰かある! --お呼びでございますか。 --おおそなたか。なに、大した用ではないのだが、これを見よ。 --これは……いつの時代の書きつけでございましょう。 --うむ。二十四年であろうか。他愛のないものであろうが、一応見てくれぬか。 --かしこまりま…

さらに続き

2024/01/31 2日ブログを書いたけれど、バックグラウンドで全然別のことも考えていた。 ある人がお金を出して一つのプロジェクトを始め、周りに仕事を請け負う人たちが集まったとする。(こう言いかえてもいい: ある人がお金を出して、あるものをつくり、まわ…

昨日の続き

昨日、原作を損なわない脚色、と簡単に書いてしまったが、厳密に言うと漫画も小説も映像に移そうとすると、必ずいくらかは損なわれてしまうものだと思う。だから、損なうかどうかが脚色の良し悪しではないのではないか(どんなに素晴らしい脚色だって、「原…

2024-01-29

「フィールド・オブ・ドリームズ」という古い映画がある。中学の頃にテレビで視聴して、すごくよかった。 同じ頃、どなたかのエッセイを読んでいて、フィールド・オブ・ドリームズについて「良い映画(原作のシューレス・ジョーがいいからね)」と軽く触れて…

バランスディスクにくし

ストレッチと筋トレのコンディショニングラボに定期的に通っている。そこのトレーニンググッズで、1番強烈なのが「バランスディスク」というもの。バランスボールを小型化、平らにした感じ。直径はフライパンぐらいで、ふっくらしたゴム製の円盤だ。 肩幅ほ…

成仏シリーズ(7)

前回の投稿に何人かのかたが反応くださって、ありがたかった。昔話を読んでくださってありがとうございました。 書き出したり、反応やコメントをいただいたりすると、まーなんか、親も人間だよなということに気付かされる。よく考えたら、当たり前だよな。一…

成仏シリーズ(6)恥をかかすな

私が6才のころのこと。休みの日に家族で海へ出かけた。 どことなくうわの空の父が運転し、助手席に母、後ろに妹と私が乗り、三十分ほどで浜辺に着いた。春先のことで、人影はまばらだった。線のひかれていない、だだっぴろい駐車場に入り、父は大きな車の右…

2023年の漢字

12/31、23:30も過ぎ、そうとう押し迫った状態でこれを書いている。 今年の漢字は?と聞かれてすぐに思い浮かんだのが「会」という字だった。 素晴らしい師匠と出会い、30年ぶりに元同級生と会い、しばらく会えなかった友だちとオンラインやリアルで会ってた…

卒業アルバム

前回、中学校時代のことを書いたので、ちょっと見たくなり、卒業アルバムを出した。 パラパラめくって自分の顔を探す。あった。いけてない。いけてなかったことは記憶していたが、それにしたって、いけてない。 撮影のシチュエーションも思い出した。写真屋…

あてにならない

私が中学の時、女子生徒2人、女性の教育実習の先生2人の4人で話していた。 先生とはいっても大学生だ。話していてつい、学生のノリになったのだろう。眉のキリリとした先生がふいに言った。 「さっき、別のクラスの生徒が私の悪口を言ってるのが聞こえたの。…

いかなる時でも読める本

不安な気持ちの時は、ミステリーを読むとよいらしい。現実離れした事件に没頭できるし、必ず最後に解決するのが精神によいという。 また、悩みが深いときは、外国語の本を読むとよいらしい。外国語を読むのに苦労する分、なかの世界に集中するので、適度に現…

窓ガラス大の空

雲のまん中に、四角い穴があいていて、青空が窓のように見えている…ネットでみかけた写真に、あ、と思っていいねを押した。 その時、頭の中を何かがかすめたので、動作を止め、注意深くふりかえる。雲の大群の中の青空を私は知っていた。 記憶のわたをそっと…

本の話がしたい

高校時代、妹の「月刊カドカワ」を借りて、パラパラと見るともなしに見るうちいつのまにかひきこまれた。真ん中あたりに載ってる短編小説だ。話の冒頭に戻り読み始める。 仕事をクビになった若い女性が、山手線に毎日乗って、網棚の上の忘れ物を盗んで生計を…

「本が好き」の謎

このところ本が読めていない。漫画なら、うっかり2、3冊くらい(もっとか)読んでしまうのに…。 にもかかわらず、自分の中には厳然と「私は本が好き」という感覚がある。なんだこれは。 ツイッターで誰かのおすすめ本ツイートに出会ったら、「うおっ」と言っ…

広辞苑占い(もどき)

早く寝なくてはならないのに、どうにも布団に入る気になれない。 こういうときはあれである。本棚の前で目をつむり、右手をてきとうに伸ばし、たまたま当たった背表紙を引き抜く。 目は閉じたまま、ページをパラパラてきとうにめくってこれだというところを…