思い出

「デッドライン」面白い

哲学者の書いた小説「オーバーヒート」に続いて「デッドライン」を読んでいる。すごく面白い。 めちゃくちゃ頭の良い学生のありふれた生活を描いているのだけど、主人公は、性指向を中心に、周囲に小さな違和をしょっちゅう感じている。 時折現れる、修士論…

筆ペン

コロナ禍のちょっと前に、とあるエッセイ(確か若松英輔さん)を読み、好きな言葉を抜書きすると良い、心にも良いし、文章の練習にもなる、的なことが書いてあるのをみつけて、へーと思った。 その後、コロナ禍に入り、生活の制限が厳しくなり、コーヒー屋も…

無知と悪あがき

本を読んでいると、知らない人名とか横文字とか専門用語がポロポロ出てくる。ググってもすぐ忘れるので、スルーすることも多い。 「もう少しおとなになれば、こういう言葉を全部あやつれるようになるんだ…」と長らく思ってきたが、人生を折り返し、なんだか…

成仏シリーズ(7)

前回の投稿に何人かのかたが反応くださって、ありがたかった。昔話を読んでくださってありがとうございました。 書き出したり、反応やコメントをいただいたりすると、まーなんか、親も人間だよなということに気付かされる。よく考えたら、当たり前だよな。一…

成仏シリーズ(6)恥をかかすな

私が6才のころのこと。休みの日に家族で海へ出かけた。 どことなくうわの空の父が運転し、助手席に母、後ろに妹と私が乗り、三十分ほどで浜辺に着いた。春先のことで、人影はまばらだった。線のひかれていない、だだっぴろい駐車場に入り、父は大きな車の右…

卒業アルバム

前回、中学校時代のことを書いたので、ちょっと見たくなり、卒業アルバムを出した。 パラパラめくって自分の顔を探す。あった。いけてない。いけてなかったことは記憶していたが、それにしたって、いけてない。 撮影のシチュエーションも思い出した。写真屋…

あてにならない

私が中学の時、女子生徒2人、女性の教育実習の先生2人の4人で話していた。 先生とはいっても大学生だ。話していてつい、学生のノリになったのだろう。眉のキリリとした先生がふいに言った。 「さっき、別のクラスの生徒が私の悪口を言ってるのが聞こえたの。…

本の話がしたい

高校時代、妹の「月刊カドカワ」を借りて、パラパラと見るともなしに見るうちいつのまにかひきこまれた。真ん中あたりに載ってる短編小説だ。話の冒頭に戻り読み始める。 仕事をクビになった若い女性が、山手線に毎日乗って、網棚の上の忘れ物を盗んで生計を…

成仏シリーズ(5)往復ビンタ

高1の夏休みのことだ。 休みは家でごろごろしていた。そこへ昼ごはんのため父が帰宅してきて、逆鱗に触れてしまった。 部屋を出ようとすると呼び止められた。勉強が本分だ、しっかりしろ、というようなことを言われ、私も生意気だったので大声で言い返した。…

成仏シリーズ(4)稼いでから言え

高1の初めてのテストでは、戻ってくる答案すべてが、見たこともないひどい点数だった。得意科目だったはずの英語ですら、平均未満しか取れず、すっかり青ざめてしまった。 これはまずい。それまで、答案は全て親に見せていたけれど、悪いときでも相当いい成…

成仏シリーズ(3)オマエは口を出すな

中学生のときのことだ。夜10時すぎ、私は母と、テレビで映画を観ていた。「日本沈没」という古い映画で渡瀬恒彦が出ていたと思う。 クライマックスの頃、ガチャ、と鍵を開けて父が帰ってきた。大きな音をたててドアを閉め、部屋に入るなり、母を怒鳴りつけた…

成仏シリーズ(2)オマエそれでいいのか

私と妹は物心つく前にスイミングスクールに放り込まれた。私3才、妹1才である。 一番下の級では、生徒はピンク色の水泳帽をかぶることになっていた。小学生のお兄さんお姉さんはどんどん進級し帽子の色が変わっていく。が、私と妹は何年も、ピンクのままであ…

成仏シリーズ(1)成仏シリーズとは

子供のようになった父に毎日接していると、まったく毒気を抜かれてしまう。 妹は「おとーさんは、ほんとはこういう性格だったんだよ」と言う。妹は優しい。 でも、ほんとってなんだ?ほんとの性格でなかったのなら、昔の父とはなんだったのか? 昔の父につい…

時をとめる

お茶を飲むということは時間をとめることだ、意図的に生活を停滞させることだから、と江國香織が「泣かない子供」で書いていたらしいです。ツイッターでみかけました。 本を読むことも時をとめると思う。長時間没頭することはなかなかできなくなったが、ほん…

レストランのいい席

体形が小太りなので服装は常に困っており、親戚の結婚式の前に、いい機会だと思ってパーソナルスタイリストさんにお世話になったことがある。スタイリストさんのカウンセリングで覚えているのは、自分の服とか服装の写真とかを持っていったときに、「レスト…

原始的な優しさ

モチモチの木っていう絵本があって、大人になってから読みました。夜一人でおしっこにいけない子供が、じさまが夜中倒れたときに、怖いのを我慢して真っ暗な夜道を走って医者を呼びに行くんです。元気になったじさまは、その子に「自分で自分を弱虫なんて思…

ふるえる顎

うちは自営業なので、家族で仕事をしています。 昔、自分の仕事を他人に軽んじられたとき、私はとても腹が立ちましたけど妹が一緒に怒ってくれました。 妹は家族で最もメンタルの安定した人ですが、非常にまれに感情が激すると、顎がふるえます。悲しいとき…

ふやけた紙の錯覚

文庫本を読んでいたとき、表紙が水濡れしてる気がして、本を閉じて確認した。…大丈夫だ。読書にもどってしばし後、やーっぱり、なーんか、表紙が水でふやけてるような気がする。お茶がついたか?でも、見るとぬれてない。あれ、人差し指の腹が、虫に刺されて…