成仏シリーズ(4)稼いでから言え

高1の初めてのテストでは、戻ってくる答案すべてが、見たこともないひどい点数だった。得意科目だったはずの英語ですら、平均未満しか取れず、すっかり青ざめてしまった。

これはまずい。それまで、答案は全て親に見せていたけれど、悪いときでも相当いい成績だった。ところが、今手元にある答案はすべて赤点レベル。こんなの、親が見たら気絶するんじゃないかと思った。

ということで、正直に母にこう話した。「今回は点数が悪くて恥ずかしいから、見せたくない。次回挽回してから見せるよ」。母は顔を斜めにして目を細め、不満げだった。

翌週である。居間から母が呼ぶ。行くと、私の答案が母の手に握られていた。父もいる。

母はやはりショックだったようで、アンタこんな点数でどうするつもりなの、高校でやっていけるの、などと嘆くような調子で言いつのる。それに対して私は言った、「私のカバン勝手に開けたの。プライバシー侵害だよ」。

すると、父の平手が頬にとんできた。

「生意気言うな。何がプライバシーだ。お前はお父さんとお母さんのお陰で勉強できてるんだ。勉強の成果を親が確認するのは当たり前だ。お前の部屋もカバンも、親のお金で買ったんだ。プライバシーなんか、なんでも自分で買えるようになってから言え。」

左頬を打たれたため、左目のふちに幅2センチのまっくろなあざができた。翌日は日曜で家族で出かけることになっていたので、あざの付いた顔ででかけて写真まで撮った。無表情な顔で写った写真が残っている。

月曜日、友達に目どうしたのと聞かれて「父に叩かれた」と答えたけど、「あはは何言ってるの」と信じてくれなかった。そんなもんだ。