あてにならない

私が中学の時、女子生徒2人、女性の教育実習の先生2人の4人で話していた。

先生とはいっても大学生だ。話していてつい、学生のノリになったのだろう。眉のキリリとした先生がふいに言った。

「さっき、別のクラスの生徒が私の悪口を言ってるのが聞こえたの。涙が出ちゃった」

言い終わって口を押さえ、涙ぐむ。

私は反射的に先生の腕に触れ、大丈夫ですよ、元気出してくださいよと言っていた(中学生に言われても笑)。

言いながら自分の気持ちの変化に驚いていた。だって私も話しながら、「この先生ちょっと怖そう〜」とか思っていたのである。先生が泣いたらとたんにそんな気持ちは雲散霧消してしまい、一瞬で先生の味方の気分になっていたのだから、あきれる他ない。

よく知らない人へのちょっとした好き、嫌いの感情なんて、すぐにひらりと変わってしまう。つくづく当てにならないと我ながら思った。

だから、よく知らん人についての悪口は言わないほうがいいなと思う。明日には好きになっているかもしれないからだ。

それに、他の人が誰かの悪口を言っていても、おいそれと真に受けないほうがいい。その人が明日には、悪口の対象者を好きになってるかもしれないからだ。

ただ、悪口を言うと、自分のなかで一貫性を保ちたいという無意識が働いて、その後も相手のことを嫌い続けやすいかもしれないな。今思ったけど。自分で「嫌い」を強化してしまうのではないか。

実習の先生とはその後もときどき雑談した。こわいのは眉毛だけで、控えめな人だったと思う。実習期間が終わる頃には少し寂しさを感じるくらいだったが、細かい出来事は忘れてしまった。

追伸
とかいって、たまには悪口を言ってしまうがな…。

追伸2

この記事を読んだ友達に「こわいのは眉毛だけ」というのはなかなかの悪口だ、と言われ、グッサーーっと来た。一言もございません。