あの人は知らないだけだ

仕事を始めたばかりの頃、相手からお話をうかがうときに、私の質問のしかたが下手で反発されることがしばしばあった。


例えば、こんな会話。
「それはどんな色でしたか?」
「黄色でしたね」
「その色は青色がかってましたか?」
「だからー、黄色って言ってるでしょう。何で何度も聞いてくるのよ」

必要があって聞いてるんだから怒らなくてもいいのに…と父にこぼしたところ、こう言われた、「あの人は知らないだけだ」。

あ……う。確かに。ということで腑に落ちた私はこんなふうに聞き方を変えた。

「それはどんな色でしたか?」
「黄色でしたね」
「実は黄色に近い色として、黄緑色があり、ときどき黄緑色を黄色とおっしゃる方もいます。黄色か、黄緑色かの違いは大事なことでして、念の為確認させてほしいのですが、その黄色は青みがかった黄緑色ではありませんでしたか?」
「あー真っ黄色でしたね。青みがかってませんでした」

こんな感じ(色について話してるのは会話をわかりやすくするためで、実際は仕事の話をしています 笑)


ひたすら質問を重ねると、相手に、詰問されているように感じさせてしまう。なぜたくさん聞くのか理由を明確にするだけで、相手に「質問の形で責められているわけではないんだな。ただ知りたいだけなんだな」と伝わり、会話がうまく流れ始める。


この尋ね方は、私はあなたの敵ではないですと伝える一つのやり方なんだと思う。


教わらなくても最初からこういったことが自然にできる人もいるのだと思う。私は自然にはできなくて、疲れないでできるようになるのに10年かかった。今でも相手によっては疲れてしまう。


父からの数少ないアドバイスの一つとして、上の一言には感謝している。のだが、実は、私にそんなことを言っておきながら、父自身は質問が私よりさらに下手で、よく嫌がられていたなー(というオチ)。