虫けら

あるSF作品を読んだ。

 

戦争で人がたくさん死ぬ。主人公はあちこちで大勢の人の死にさらされながら、無感情に生きる。戦争を偶然生き延びてからも、運命に翻弄される自分を空から眺めるような感覚がぬけない。

 

人間は虫けらと同じだということが、真実描かれていた。

 

まったくそれは真実なんだけど、この真実を自分のまん中においてしまうと、生きるのが嫌になる。

 

だから、木皿泉のエッセイを読んでもう一つの真実を確認した。それぞれの人が、あれやこれや考えていて、その全てが周りの人には一切わからない。けれど、一人一人の頭の中には宇宙に匹敵する世界が存在する。そのことに驚く、という話だ。

 

どっちも真実だけど、虫けらの頭の中に誰も分からぬ広大な世界がある、という真実にしがみつかないと、私は生きていけない。