樹上のゆりかご

昔、紙で読んで手放した本を、たまに電子で買い直して読み直したりする。今回は、「樹上のゆりかご」という荻原規子の20年前の本を読んだ。児童書というか中高生向けの本だと思うけれど、とても面白かった。昔読んだときよりも面白く感じた。若い頃は純粋に学園物として読んだけど、今回は登場人物の心理をよく読み取れた気がする。


劇中劇にサロメが出てきた理由や、同性として破滅的で魅力的な女の子にひかれる気持ち、自分を傍観者と呼ぶ冷静さ、意味のない行事に熱狂して感じる一体感も、おお、わかるわかる、と思えた。すごく没入してしまった。


ミステリーのように結論をはっきりさせない点が不満だ、という感想も目にしたが、ぎりぎりリアルな領域に踏みとどまって会話をさせると、あのようになるのではないかと思う(それでも現実の会話より難しいと思うけど…)。同級生が何を考えてるかなんて、いっとき腹をわって話したとしても、わからないことのほうが多い。自分でも自分の気持ちがわからないこともある。人の気持ちなんて、くっきりと原因と結果を結び付けられないものだから。


主人公は傍観者だと自己分析するけれど、観察者だということもできる。観察者は作者のように、語り部になりうるのだなぁと思う。


余談:自分が高校生の時点でこの本を読んでも、きっと面白さが理解できなかったと思う…。楽しめるのってけっこう大人になってからじゃないかなぁ。